医療費負担が苦しい
「年金が少ないので検査はしたくない薬だけ出してほしい。」という通院患者さんがある。また往診や訪問看護の回数を減らし、自分で何とかするから来ないでくれという自助努力=「がまん」をしている在宅の患者さんたちのことが気にかかる。
医療にかかる費用は去年とは大きく変わらないが米をはじめとする食費やガソリン代、水光熱費など生きるための費用が上がっているのに収入は増えないのだから医療費さえも削るしかないのだ。医療・介護費の自己負担が2割負担や3割負担に増えた高齢者なら支払うたびに費用のことが気になるだろう。
つい先日は介護保険3割負担の患者さんに介護医療院入所を勧めたが断念され自宅でケアすることとなった。
政治的争点になるか?
現在は参議院選挙中であるがその結果を知らずに書いている原稿である。「高額療養費の見直し」で自己負担増を提案している自民党の議席数がどうなるのか?大きな関心事である。1か月の医療費自己負担金を制限する「高額療養費制度」ができたのは40年前だが当初は上限3万円とかであったと記憶する。それが現在は月収20万円のひとでも上限5万7600円(1医療機関での負担上限)にまで上がっている。これを政府が7万9200円に増額しようと目論んでいるのだ。
在宅療養しながら2児を育てる女性に医療費を聞いてみて驚いた「毎月15万円くらい払います」。病院とクリニック、訪問看護ステーションにそれぞれ上限を支払うとそうなるのだという。子育てをしながら日々命をつなぐ家庭にこの経済的負担は大きすぎるだろう!
そもそもこの制度はどうして必要か
この制度がない時代には例えば若い夫婦のどちらかが人工透析を受けることになると年間1000万円の医療費の自己負担分を支払えない。だから離婚して単身となって生活保護の医療扶助をうけて生きるしかない実態があったそうだ。現在は人工透析、血友病、HIVなどの長期に高額な医療費がかかる患者には費用負担月1~2万円の上限が設けられているが、現在の課題は若年でそれも進行したがんの長期療養である。
一人当たり年間薬剤費1000万と言われたオプジーボに始まり次々と開発されている新しいがん治療薬、治療法はどれも高価である。これら新薬はケースを選んで使えば著効し手術で取り切れない場合でも癌が消えることもあり進行が抑えられる場合も多い。しかし長く治療を続けなければならないケースがほとんどで毎月の薬剤費、入院の差額ベッド代、交通費など出費は毎月続くが働かなければ収入は減る。癌を抱えながら頑張って働いて収入を維持した場合は医療負担上限が15万とか25万のままというジレンマに陥る。
命をつなぐために必要な社会保障を
今でも40歳未満の在宅療養がん患者は介護保険利用ができないため介護用ベッド・福祉用具やヘルパー利用にかかる費用負担も大きい。身体の障害が重度でもがん患者の場合は状態が不安定なため身体障碍者手帳の取得はかなり難しい。新しい治療が有効となり療養期間が長くなった時代の変化に合わせて若年がん患者にも「特定疾患」や「難病医療」といった医療福祉の制度が新たに適応、新設されることを願わずにはいられない。
健康いちばん 2025/08 四季のカルテ
村上正治







